労災保険をチェック

労災保険制度からは、保険給付の他に特別支給金が支給されます。

(1)主な保険給付

支給される主な保険給付は次のとおりです。

  保険給付 内容
療養補償給付治療関係費
休業補償給付休業1日つき給付基礎日額の6割
障害補償給付後遺障害等級が認定された場合に年金または一時金
遺族補償給付年金または一時金

この他、重い後遺症が残った場合の⑤介護補償給付、葬儀を行った人に支給される⑥葬祭料などがあります。

(2)特別支給金

保険給付とは別に特別支給金が支給されます。この特別支給金は後に損害賠償請求する際に損害額から控除されません。

  保険給付 特別支給金
療養補償給付 
休業補償給付休業特別支給金
障害補償給付

障害特別支給金

障害特別年金または障害特別一時金

遺族補償給付

遺族特別支給金

遺族特別年金または遺族特別一時金

損害賠償金を計算

(1)損害項目

損害は財産的損害と精神的損害に分けられます。
財産的損害は積極損害(出費したという損害)と消極損害(収入減という損害)に分けられます。

 具体例
積極損害治療関係費、入院雑費、交通費
付添看護費、将来の介護費
装具・器具購入費、家屋改造費
葬儀関係費など
(弁護士費用)
消極損害休業損害
後遺症による逸失利益
死亡による逸失利益
精神的損害入通院慰謝料、後遺症慰謝料
死亡慰謝料、近親者慰謝料

(2)労災保険給付を控除

労災保険等から支給された金額を控除します(特別支給金は控除しません。また、年金については、将来給付予定分は控除しません。)。

 具体例控除
積極損害治療関係費、入院雑費、交通費
付添看護費、将来の介護費
装具・器具購入費、家屋改造費
葬儀関係費など
(弁護士費用)
①療養補償給付
⑤介護補償給付
⑥葬祭料
消極損害休業損害
後遺症逸失利益
死亡による逸失利益
②休業補償給付
③障害補償給付
④遺族補償給付
精神的損害入通院慰謝料、後遺症慰謝料
死亡慰謝料、近親者慰謝料
 

具体例でチェック

被  災  者:工場作業員のAさん(35歳)
年  収:410万円(基本給30万円、年間賞与50万円)
事故内容:右手が機械に巻き込まれ右手首を負傷
治療経緯:6か月通院(全部休業)。後遺症残る。

以下、8級、10級、12級と認定された場合の請求金額を確認

(1)後遺障害等級8級の場合

後遺症の内容:Aさんの右手首がまったく動かない(動かせない)状態

請求金額 4712万円

【既払い労災保険給付】
①療養補償給付:治療費は全額労災保険から受給
②休業補償給付:約106万円(この他、特別支給金約35万円)
③障害補償給付:約497万円(この他、特別支給金65万円、特別一時金約68万円)

ⅰ 休業損害の請求額

74万円

6か月休業した損害
180万円

休業補償給付
106万円

ⅱ 後遺症逸失利益の請求額

3264万円

8級の後遺症による減収
3761万円

障害補償給付
497万円

ⅲ 慰謝料の請求額

946万円

入通院慰謝料
116万円

後遺症慰謝料
830万円

ⅳ 弁護士費用の請求額

428万円

(ⅰ+ⅱ+ⅲ)

×

10%

ⅴ 請求額合計

4712万円

ⅰ+ⅱ+ⅲ+ⅳ

(2)後遺障害等級10級の場合

後遺症の内容:Aさんの右手首の可動範囲が左手首の1/2以下に制限

請求金額 2970万円

【既払い労災保険給付】
①療養補償給付:治療費は全額労災保険から受給
②休業補償給付:約106万円(この他、特別支給金約35万円)
③障害補償給付:約298万円(この他、特別支給金39万円、特別一時金約41万円)

ⅰ 休業損害の請求額

74万円

6か月休業した損害
180万円

休業補償給付
106万円

ⅱ 後遺症逸失利益の請求額

1959万円

10級の後遺症による減収
2257万円

障害補償給付
298万円

ⅲ 慰謝料の請求額

666万円

入通院慰謝料
116万円

後遺症慰謝料
550万円

ⅳ 弁護士費用の請求額

270万円

(ⅰ+ⅱ+ⅲ)

×

10%

ⅴ 請求額合計

2970万円

ⅰ+ⅱ+ⅲ+ⅳ

(3)後遺障害等級12級の場合

後遺症の内容:Aさんの右手首の可動範囲が左手首の3/4以下に制限

請求金額 1646万円

【既払い労災保険給付】
①療養補償給付:治療費は全額労災保険から受給
②休業補償給付:約106万円(この他、特別支給金約35万円)
③障害補償給付:約154万円(この他、特別支給金20万円、特別一時金約21万円)

ⅰ 休業損害の請求額

74万円

6か月休業した損害
180万円

休業補償給付
106万円

ⅱ 後遺症逸失利益の請求額

1016万円

12級の後遺症による減収
1170万円

障害補償給付
154万円

ⅲ 慰謝料の請求額

406万円

入通院慰謝料
116万円

後遺症慰謝料
290万円

ⅳ 弁護士費用の請求額

149万円

(ⅰ+ⅱ+ⅲ)

×

10%

ⅴ 請求額合計

1646万円

ⅰ+ⅱ+ⅲ+ⅳ